Episodes
 国際的な医学博士で、探偵小説にも通じ江戸川乱歩を発掘した小酒井不木の短編です。老婆の往診に呼ばれた医者は、その老婆の家に古くから代々伝わる難病の話を聞かされます。医者は最新の医学でその病気を診断します。なぜ老婆は豹変し、この結末に至ったかの解釈を楽しんでください。
Published 07/17/24
 街で自分そっくりな男を見つけて驚きのあまり後をつけていくと、その男は自分の部屋に入っていきます。同じような姿形、同じような暮らしぶり、個が埋没して自分を失いそうになる時代に、自分であるためには自分だけのお守りが必要となってきます。1960年に発表され、欧米の雑誌にも翻訳掲載された短編です。
Published 07/11/24
 主人公は黒い野良猫が泰然と近所を徘徊する姿を目にします。そのうちに家のなかに勝手に入り込んでくるようになり、ついには祖母に捕らわれます。療養生活を送ってきた主人公は、黒猫の周囲を意に返さず孤塁を守るような佇まいに共感を覚えますが、祖母にとってその黒猫は害悪でしかありませんでした。
Published 07/06/24
 お茶を飲もうと口元に引き寄せた茶碗の中に、思いもかけぬものが現れます。不思議は何のかかわりもなく突然に、身に降りかかってくることがあります。理由も因縁も描かれていないこの短編を完結させるのは、あなたの想像力です。
Published 07/02/24
 満員電車で座ることの出来なかった主人公は、車内を観察しながら、席に着くべき人や譲るべき人について思いを巡らします。他人の自分勝手な態度に立腹しますが、思いやりや優しさを失わずに過ごしていくことはそう簡単ではありません。正しくありたいと思っている自分に、醜さを発見し愕然とします。
Published 06/28/24
 日本が近代化に向かうなかで、持つ者と持たざる者の差が開く一方で、労働者階級の意識も高まり連帯して労働条件を変えようという運動が盛んになったころのことです。若く真面目な青年機関士が、薄幸な運命を生きる女と知り合いますが、思わぬ仲間の行動が女の運命を変えてしまいます。
Published 06/24/24
 谷崎潤一郎のマゾヒズム小説のなかでも人気の高い作品です。気難しそうな哲學者蘿洞先は、取材に来た記者の質問になに一つまともに答えず、教職者としての熱意も一向に感じさせません。記者は取材の帰り際に、そんな先生の思わぬ姿を目にします。
Published 06/08/24
 昭和の初めの大阪、当時の下働きの使用人の暮らしぶりや人生をしみじみと感じさせる話です。商家での雇われの身は、今の労働者や被雇用者でもなく、勤め人とも違う住み込みで、職場そのものが人生の置き場でした。同じ毎日を繰り返していた使用人の人生が、大金を持って使いに出されたことで変わっていきます。 Masterpieces of modern Japanese literature are read in beautiful Japanese with correct pronunciation.
Published 05/27/24
 中国の唐の時代を舞台にした短編です。地方官吏が常日頃から悩まされている持病の頭痛を、貧しい身なりで流浪する僧が直してくれます。その力に驚いた官吏は、その僧から本当に凄い人物のことを教えられます。森鴎外が子供を楽しませるために話した内容を、小説に仕立て直しました。 、
Published 05/15/24
 宮沢賢治作品のなかでも人気の高い寓話です。時の流れとともに土地も暮らしも変わっていきますが、いつの時代にも人の心を豊かにしてくれるものがあります。その価値がわかるのは、利にさとい人でもなく、自分を賢いと思っている人でもなく、純粋な心を持った人です。
Published 05/06/24
 菊池寛が歴史について書いた作品は、大衆向けでわかりやすくエピソードなどを織り交ぜながら飽きさせずに歴史の面白さを教えてくれます。特に時代を動かした人物については、ポイントを抑えながら生き生きと描き出すことに定評がありました。
Published 04/30/24
 山本周五郎の滑稽ものには、ときおり粗忽者が登場します。この短編には幾人もの粗忽者が登場しますが、舞台が落語の長屋と違い堅苦しい作法にしばられた武家社会だけに、ひと味違う可笑しみがあり、劇的な役割を果たすことになります。
Published 04/20/24
 夏の休暇で海辺のホテルを訪れた女優は、そこで見かけた男性に一目惚れします。互いを知っていく二人は、不思議な縁で繋がっていました。昭和モダニズムの頃に、新時代の感性を取り入れた作品を発表した渡辺温の短編です。
Published 04/13/24
 人々が夜に集まって怪談を語り合う百物語。そこで語られる怪談だけでなく、百物語という催しそのものが、不穏で猟奇性を帯びて感じられます。上州の若侍たちが山寺で行った百物語の最中に、不思議な女があらわれます。それは妖怪でしょうか、なにかの予兆だったのでしょうか。
Published 04/09/24
 赤穂藩浅野家の小野寺十内は文武に優れ、京都留守居役を務めながら愛妻とともに初老をむかえました。そのまま何事もなければ悠々自適の老後となるところでしたが、松の廊下の切腹事件が起こり、夫婦の晩年は一変します。それぞれの本分を尽くした夫婦の物語です。
Published 04/05/24
 明治から戦前の昭和に詩人として一時代を築いた薄田泣菫は、味わい深い随筆でも人気でした。人生の晩年に春を感じて心に浮かぶさまざまな思いを、詩人らしいフレーズを織り交ぜながら、訥々とした語り口で浮かび上がらせます。泣菫は春にまつわる作品が多く、春の甲子園の2代目大会歌「陽は舞いおどる甲子園」の作詞家でもあります。
Published 03/29/24
 主人公は合戦の最中に、まさに身を捨てた激烈なやり方で味方の攻撃を支え戦を勝ちに導いたものの、評価をされないばかりか陰で嘲られるような境遇に陥ります。彼には出世よりも貫きたい武士の道があり、意外なところに理解者がいました。
Published 03/19/24
 徳川幕府の初期、厳しくキリシタンを弾圧した役人が、現れた幻士に惑わされ、運命を翻弄されます。田中貢太朗は幅広い分野で作品を発表しましたが、なかでも大いに筆をふるった怪談奇談の代表的な短編です。
Published 03/07/24
 ご存じのように夏目漱石の「吾輩は猫である」は、日本の近代文学史を語るときに欠かすことの出来ない重要な作品です。視点は新鮮で語り口は軽妙、面白く読ませながら人間について考えさせます。この作品が世に出るには、さまざまな偶然があったことが語られます。
Published 03/04/24
 十四歳の少年が、村のみんなから気難しいといわれている漢学の老先生と口論になるところから話がはじまります。タイトルの「初恋」にどのようにして進んでいくのかを楽しみにお聞きください。人は実際に触れ合うことで本当に理解しあえ、そこから縁がつながっていくというお話です。
Published 02/27/24
 孤独な少年ジョバンニと友人のカムパネルラが天空を旅する「銀河鉄道の夜」の原稿は宮沢賢治の死後に発見されました。推敲を重ねた第4次稿までありまだ未完成とされていますが、それでもなお発表され、読みつづけられてきました。結末も2種類ありますが、この朗読では4次稿の方を採用しています。
Published 02/21/24
 談話をベースとした漱石の軽妙な語り口を楽しめる随筆です。生まれ育った環境や、「坊ちゃん」の背景などに触れつつ、駆け足で人生前半を語ります。幼い頃の漱石に影響を与えたであろう破天荒な兄たちの様子が愉快です。
Published 02/16/24
 雪の降った日の夜、母さん狐は手のかじかんだ狐の坊やを町に手袋を買いに行かせます。幼い狐が森閑とした山から灯のともった町へと向かう情景が、童話の世界へといざなってくれます。新美南吉の代表作のひとつです。
Published 02/13/24
 寺田寅彦はかつて正岡子規から渡された手書き地図を見て、当時のことに思いをはせます。子規が亡くなるまでのおよそ8年半を過ごした東京都台東区根岸の地図です。寺田は地図をみて思いたち、三十年来ぶりに鶯谷から根岸あたりを訪ねてみました。
Published 02/08/24
 「蕭々」は物寂しいさまをあらわす言葉です。家来として藩主に尽くすことを本分とした男は、狂おしいほどに滅私奉公に打ち込むあまり、相手の気持ちやまわりが見えなくなってしまいます。そのためにしくじって藩主の不興をかい藩を去ったのち、ある事件が起こります。
Published 01/30/24