Episodes
強盗を犯して捕まった犯人が助かりたいばかりに、若い警官を殺めて逃走します。その犯人がついに見つかり、群衆の中を連行されていく場に、小泉八雲はいました。そこで起きた出来事に、八雲は日本人ならではの心情と反応をみます。
Published 11/20/24
東京駅に降り立った女たちの荷物を運ぶ赤帽がいる。その赤帽はすべてが「3」にまつわるタイミングで現れる。あまりにも揃い過ぎていることに気が付いた赤帽仲間は、その理由が気になって仕方がない。たまらず本人に聞くと、それなりの理由を説明されたのだが‥‥。
Published 11/14/24
貧しい農家の少年は毎日仕事に追われながら、遠い彼方に見える金色に輝く窓の家を見て、いつも思いを巡らします。珍しく休んでいいといわれた日、少年はその窓を見に行くことにしました。少年がそこで出会い、見つけたものはなんだったのでしょうか。
Published 11/08/24
世の中には、豊かな暮らしを送りながらも、貧しい人々の苦しみや痛みを我がことのように受け止められる人がいます。しかし、いつも慈悲深く施しをいとわない人にでも、人を疑う気持ちが芽生えることはあります。真実はどこにあったのでしょうか。
Published 11/03/24
「道程」は高名な詩ですが、教科書等に掲載されて多くの人が口ずさんでいたのは短く書き直されたもので、発表当初の長かったものは意外に知られていません。当時の美術界の古い体質に挑むとともに、千恵子との新生活が始まろうとした光太郎の前進する気持ちを表した詩でした。その全文です。
Published 10/27/24
ある時、「幸福」が人々の家を訪ね歩きます。「幸福」が訪れれば誰しもが喜んで受けいれそうなものですが、そうはなりません。「幸福」が「幸福」の姿で訪れるとは限らないからです。「幸福」がもたらされた家はどんな家だったのでしょうか。
Published 10/22/24
伝承話は人々の口伝えに語り継がれるうちに、脚色され面白く誇張され、時にはバカバカしいほどの大ボラに変化することがあります。得てしてそのような話の方が面白がられ、長く残ったりもします。手練れの菊池寛が、大力にまつわるそのような話をまとめました。
Published 10/13/24
和漢の怪談に精通した田中貢太朗の短編です。深夜に雨宿りのため空き家に無断で上がり込むと、どこからともなく女が現れます。簡単な、しかし不可解な頼みごとをされると、無断で上がった後ろめたさと申し出られた報酬にひかれて引き受けてしまいます。そして、そのほんのちょっとしたことが凄惨な事件を引き起こしてしまうのです。
Published 10/10/24
最近は鉛筆をナイフで削ることは少なくなっているように思います。削り方は人さまざま、先を細く鋭くする人もいれば、短く尖らせない人もいます。そんな鉛筆の削り方を題材にして、著名な物理学者が、暮らしや生き方の規範について話が繰り広げられていきます。
Published 10/06/24
正岡子規が俳句や短歌のみならず、日本文学全体に大きな影響を与え、多大な功績を残したことはいうまでもありません。22歳で喀血して以来、その創作の多くは病に伏せる床のなかで行われました。身辺にあるものを見つめ、思索を巡らせては発見を続けました。物の形から人の顔を思い浮かべ、揺れるランプの炎の向こうに幻想を膨らませます。そんな子規の日常が映し出されたような掌編です
Published 10/01/24
家父長制社会で女性の社会進出にも就学にも消極的であったころは、同じように庶民の娘として生まれても、嫁入り先次第で人生が大きく変わってしまいました。娘をなんとか豊かな家庭に嫁がせようとする親もいれば、今の暮らしが幸せと考える親もいます。しかし現実はシビアです。
Published 09/29/24
嘉永七年、伊豆の下田に黒船がやってきた。鎖国で世界から遅れをとった日本に危機感を抱いていた吉田寅二郎こと松陰、「何事もならぬといふはなきものを、ならぬといふはなさぬなりけり」の人、世界が見たいと矢も楯もたまらず、乗り込もうともくろみます。日本の歴史にを変えた密航未遂事件の裏側。
Published 09/22/24
ラジオ方法の開始とともにアナウンサーという職業が誕生します。日本でラジオ放送が始まったのは1925年、公共放送の電波にのせて多くの人に話しかけるノウハウをアナウンサーたちは作っていきます。和田信賢はその黎明期に活躍した伝説的存在の一人です。
Published 09/12/24
航海中に遭難して孤島に取り残された兄と妹からのメッセージが入った瓶が流れ着きます。幼くして二人きりとなった兄妹は、意外にも過ごしやすく恵まれた環境の島で、手元に残った聖書を唯一の学びの糧としながら、すくすくと成長していきます。時を開けて流されたと思われる瓶のメッセージは、二人に不穏な変化が起きてることを想像させるのです。
We are reading masterpieces of Japanese literature with correct pronunciation.
Published 09/09/24
家族唯一の働き手として家を支えている若い会社員の女性は、夏休みの間に働きに来ながら不遇な生い立ちを語る大学生の青年に同情し、話し相手となって励まし続けます。夏が終わるころに青年は去り、お互いを思いやる二人の関係を成り立たせていたのは"嘘"であったことがわかります。
Published 09/08/24
夢についてのメモのような断片が、脈絡があるようで無いようで、次々に登場します。ラジオでメールが読まれていくような感覚で、納得したりなにかを想像させたり、さまざまな視点から夢について考えさせられます。短い文章の一つ一つがなにを示唆しているのか楽しみながらお聞きください。
Published 08/31/24
松林蝙也斉は夢想願流の創始者で伊達藩の剣術指南役をつとめ、落ちる柳の枝を13回も両断したり、小太刀で飛ぶ蠅を斬ったなどの逸話が残る剣豪です。その腕前を楽しめる活劇に、恋を絡めて男女の機微を映し出す山本周五郎ならでは短編です。
Published 08/26/24
興行の世界には、これまでどんな生き方をしてきたのか見当もつかない不思議な芸を身に付けた芸人が出入りします。時代風俗を切り取る名手の久米正雄が、売り込みに来た芸人の様子を生き生きと描き出します。ちなみに最後に登場する「二丁」という言葉は、歌舞伎由来で開演前の合図をあらわします。
Published 08/21/24
そのどこにでも生えている野草はまがまがしい効能を持つ一方で、ある一部の人にとっては天の助けに思えるものでもありました。興味本位で交わした雑談が思わぬ方向へと広がっていきます。明治大正から昭和の初め、日本の近代化が進むなかで、とり残された貧しい人々の差し迫った状況が生々しく伝わってきます。
Published 08/16/24
「故郷は遠きにありて思ふものそして悲しくうたふもの」と詠んだ室生犀星は、石川県金沢市で幼少期を送りました。私生児として生まれて養子に出されたため、決して幸福な幼少時代とはいえませんでした。その時代、物心つくまえの幼い犀星が過ごしたなにげない時間の愛しさが伝わってきます。
Published 08/12/24
思わぬところに現れた見知らぬ人の顔が、自分になにかを語りかけてきます。なにを伝えたいのか、なにをしたかったのか。ことが進んでも謎は深まるばかり。多くの怪談を残した小泉八雲が、とらえどころのない不可思議な出来事を取り上げた掌編です。
Published 08/06/24
俳人で小説家の高浜虚子は、夏目漱石が「吾輩は猫である」や「坊ちゃん」を発表した俳句雑誌(のちに総合文芸誌)「ホトトギス」の編集者でもありました。漱石の作品掲載にも尽力した高浜について、漱石の弟子の寺田寅彦が書いた一文です。
Published 07/29/24
騙され裏切られて無一文になり世を拗ね旅に出た男。うらぶれた身なりでどうにでもなれと振舞う男は、今まで出会ったことのない人達に出逢います。禍福はあざなえる縄の如しという言葉のように、金五十両を巡って人間の善と悪を目の当たりにする話です。
Published 07/23/24
戦前戦後を通して創作を続けた沖縄出身の山之口貘の詩は、今も多くの人の心を捉えています。資産を得ることには無頓着=つまり貧乏で、なにも持たない一人の人間として作品を生む出したことが、時を越える普遍性を作品に与えたのかもしれません。そんな山之口の朗らかな貧乏ぶりがうかがえる作品です。
Published 07/19/24