71,12月21日 月曜日 16時58分 金沢北署
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71.mp3 「俺がですか?」 捜査本部の隅で携帯電話を手で覆うようにひそひそ声で話す岡田の姿があった。 「…わかりました。で、俺はどこに行けばいいんですか。」 岡田は部屋の壁に向かってボソボソと話し、電話を切った。 「誰だ?」 背後から声が聞こえた。岡田が振り返るとそこには松永がいた。 「り、理事官。」 「こそこそやってんじゃねぇよ。」 そう言って松永は岡田の腕を掴んだ。 「おい。お前らこいつみたいにこそこそやってたらただじゃ済まさんぞ。」 松永は岡田の腕を決めて彼に膝を付かせた。 「お仕置きだ。こっち来い。」 松永は岡田をしょっぴくように捜査本部から出て、別室に彼を連行した。 別室に入るなり松永は掴んでいた手をそっと離した。そして岡田に席に着くよう指示を出した。 「片倉か。」 「はい。」 「奴は今どこまで進んでいる。」 「はい。片倉課長はアサフスの張り込み、古田警部補は金沢銀行の張り込みといった具合です。」 「なぜ張り込む。」 「佐竹と赤松の身の安全を確保するためかと。」 「そうか。」 松永は突如として部屋にあるテーブルや椅子を壁に向かって投げつけた。そのため大きな物音が部屋中にこだました。 「ばかやろう〓︎クズが何やってんだ〓︎おめぇのような奴がいると全体の士気に影響が出るんだよ〓︎」 「申し訳ございません〓︎」 「何度言えば分かるんだ〓︎俺はな、隠し事をする奴が一番嫌いなんだよ〓︎」 「理事官…申し訳ございません〓︎この通りです〓︎ぐはっ…」 こっそりと二人の後をつけて部屋の外から聞き耳を立てていた関は、突然鳴り響いた怒号と物音に身をすくめた。その様子が部屋のキャビネットに潜ませた監視カメラのモニターに映し出されていた。 「あのなぁ。腕の一本や二本折らないとわかんねぇのかな。」 「やめて…下さい…。」 「オラァ〓︎」 「うぎゃあああああ〓︎」 室外にこだまする岡田の悲鳴に関は顔を背けて、その場から立ち去った。それをモニターで確認し、二人は続けた。 「おらぁ〓︎これでもか〓︎これでもか〓︎」 「すいません〓︎助けてください〓︎」 お互いが笑みを浮かべながら怒号を発する様は、誰かが見れば何かのコントをやっているようにも思える滑稽さだった。 「行ったな。」 「はい。」 二人は笑いを堪えた。 「この通りだ。関は何かと俺に探りを入れてくる。俺はあくまでも気が狂った捜査官。これを通さないと全部がぱあだ。」 「心中お察しします。」 岡田は今にも吹き出しそうな表情で松永に答えた。 「で、お前はこれから何をやる。」 「古田警部補の車を金沢銀行まで届けます。」 「そうか、しかし、片倉と古田の2人であの2人の身の安全を図るってのはちょっと無理があるな。」 松永は携帯電話を取り出してどこかに発信した。 「お疲れさまです。松永です。…ちょっとお力を貸して頂きたいんですが。…ええ、あと少しです…。ええ…はい…。腕っ節の強い素直な人員をよこしてくれませんか。もちろん秘密を守ることができるあなたのお眼鏡にかなった人員です。…警備部ですか…。警備部もあっちの息がかかった奴がいると思うんで…ちょっと…。ええ、はい…。ああ…そうですか。なるほど…。わ
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81.2.mp3 現場に一人残された村上は震える手で井上の顔面めがけてハンマーを振り下ろした。何度も。彼の身につけている白いシャツにおびただしい量の血液が付着した。 その後、塩島の携帯で警察に通報した村上はひとまず山頂を目指した。山頂から麓まで一気に駆け下りることができる場所ががあることを村上は高校時代の鬼ごっこで知っていた。しかしその山頂には間宮と桐本がいた。自分の姿を目撃され万事休すと思った時だ。気がつくと目の前に二人が倒れていた。おそらく自分がやったのだろう。無我夢中だったためなのか全く記憶にない。村上はこれも一色の犯行とするため、2人の顔面を破壊したのだった。 鍋島と村上は2...
Published 08/26/20
80.2.1.mp3 静寂の中、銃声が鳴り響いた。 目の前が真っ暗になった。 撃たれた。 俺は村上に撃たれた。 撃たれた? 痛くない。 そうか脳をやられたか。 いや、ならばこんなに頭が働かないはずだ。 眩しい。 なんだこの光は。 そうか俺は死ぬのか。 寒い。 風が寒い。 地面も冷たい。 地面? なんで地面が冷たいってわかったんだ。 手が動く。 痛くない。 まさか。 佐竹は目を開いた。 彼は無意識のうちに目を瞑って地面に倒れこんでいたようだ。彼は即座に身を起こした。すると村上の姿が目に飛び込んできた。彼はその場にうずくまって自分の右腕を抑えていた。...
Published 08/19/20