Description
71.mp3
「俺がですか?」
捜査本部の隅で携帯電話を手で覆うようにひそひそ声で話す岡田の姿があった。
「…わかりました。で、俺はどこに行けばいいんですか。」
岡田は部屋の壁に向かってボソボソと話し、電話を切った。
「誰だ?」
背後から声が聞こえた。岡田が振り返るとそこには松永がいた。
「り、理事官。」
「こそこそやってんじゃねぇよ。」
そう言って松永は岡田の腕を掴んだ。
「おい。お前らこいつみたいにこそこそやってたらただじゃ済まさんぞ。」
松永は岡田の腕を決めて彼に膝を付かせた。
「お仕置きだ。こっち来い。」
松永は岡田をしょっぴくように捜査本部から出て、別室に彼を連行した。
別室に入るなり松永は掴んでいた手をそっと離した。そして岡田に席に着くよう指示を出した。
「片倉か。」
「はい。」
「奴は今どこまで進んでいる。」
「はい。片倉課長はアサフスの張り込み、古田警部補は金沢銀行の張り込みといった具合です。」
「なぜ張り込む。」
「佐竹と赤松の身の安全を確保するためかと。」
「そうか。」
松永は突如として部屋にあるテーブルや椅子を壁に向かって投げつけた。そのため大きな物音が部屋中にこだました。
「ばかやろう〓︎クズが何やってんだ〓︎おめぇのような奴がいると全体の士気に影響が出るんだよ〓︎」
「申し訳ございません〓︎」
「何度言えば分かるんだ〓︎俺はな、隠し事をする奴が一番嫌いなんだよ〓︎」
「理事官…申し訳ございません〓︎この通りです〓︎ぐはっ…」
こっそりと二人の後をつけて部屋の外から聞き耳を立てていた関は、突然鳴り響いた怒号と物音に身をすくめた。その様子が部屋のキャビネットに潜ませた監視カメラのモニターに映し出されていた。
「あのなぁ。腕の一本や二本折らないとわかんねぇのかな。」
「やめて…下さい…。」
「オラァ〓︎」
「うぎゃあああああ〓︎」
室外にこだまする岡田の悲鳴に関は顔を背けて、その場から立ち去った。それをモニターで確認し、二人は続けた。
「おらぁ〓︎これでもか〓︎これでもか〓︎」
「すいません〓︎助けてください〓︎」
お互いが笑みを浮かべながら怒号を発する様は、誰かが見れば何かのコントをやっているようにも思える滑稽さだった。
「行ったな。」
「はい。」
二人は笑いを堪えた。
「この通りだ。関は何かと俺に探りを入れてくる。俺はあくまでも気が狂った捜査官。これを通さないと全部がぱあだ。」
「心中お察しします。」
岡田は今にも吹き出しそうな表情で松永に答えた。
「で、お前はこれから何をやる。」
「古田警部補の車を金沢銀行まで届けます。」
「そうか、しかし、片倉と古田の2人であの2人の身の安全を図るってのはちょっと無理があるな。」
松永は携帯電話を取り出してどこかに発信した。
「お疲れさまです。松永です。…ちょっとお力を貸して頂きたいんですが。…ええ、あと少しです…。ええ…はい…。腕っ節の強い素直な人員をよこしてくれませんか。もちろん秘密を守ることができるあなたのお眼鏡にかなった人員です。…警備部ですか…。警備部もあっちの息がかかった奴がいると思うんで…ちょっと…。ええ、はい…。ああ…そうですか。なるほど…。わ