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「松永…。」
片倉と古田は苦い表情をして彼を見た。
「ほら採れたてのほやほやだ。」
松永は1枚の紙ペラを二人に見せた。
「何だこれは。」
「Nシステムで補足した19日からの村上の行動経路だ。」
「何?」
「そこでお前たちに知らせたいことがある。」
そう言って松永はここで立ち話をするのは控えたいとして、二人を県警の別室へ招いた。松永の存在に不信と疑念を抱いていた二人であるが、今は一刻を争う。そんなことは言ってられない。彼らは松永の求めに応じた。
別室の扉を閉じて松永は手にしていた紙を机に広げ、口を開いた。
「村上の行動がおかしい。」
「何がだ。」
「ここを見ろ。」
片倉と古田は松永が指す20日の箇所を見た。
「七尾?」
「そうだ。岡田が村上の行動に気になる点があると言っていたから、あいつの所有車ナンバーを追跡した。そしたらこうだ。」
片倉と古田は資料を読み込んだ。そこには村上の証言と今回のNシステムによる村上の行動履歴を時系列で整理した表が記載されていた。
村上の証言によると彼は20日の12時ごろに熨子山の検問に会い、それから1時間かけて高岡に向かった。高岡に着くのは13時前後。そのまま氷見へ行くと30分後の13時半。そこのコンビニで30分滞在したので、14時まで氷見にいたことになる。そこから羽咋を経由して金沢にそのまま向かえば1時間50分程度だから16時ぐらいには金沢に入る。村上の氷見までの時刻に関する証言はNシステムのものとそう異なるものではなかった。
しかしそこからが違う。Nシステムのものは14時40分に七尾。15時40分に羽咋。16時30分に金沢といったものだった。
「どうだ。あいつの証言と食い違っているだろう。」
片倉は自分と古田、そして岡田しか持ち合わせていない村上の情報を松永が得ていることを知って、一種の気味の悪さを感じた。しかし今は松永相手にいろいろ詮索している暇はないと考え、彼に合わせることとした。
「そうやな…。」
「もうひとつ気になる点がある。」
「なんや。」
「村上は氷見のコンビニに車を止めて休憩したと言ったそうだな。」
「おう。」
「そのコンビニに村上が滞在した形跡がない。」
「なに?」
「コンビニの従業員に村上の車両を目撃したか確認したが、思い当たらないそうだ。ついでに付近の監視カメラも解析したが、それらしいものもない。」
「ということはあいつが言っとることは、全くのデタラメってことか。」
松永は頷いた。
「片倉。村上のこの七尾滞在時刻で気になるところはないか。」
片倉は再び資料を見た。
「14時40分から15時40分…。七尾から羽咋まで1時間か…。たしか普通なら七尾から羽咋までの距離なら40分くらいで移動できる距離やから…空白の20分があるってことか?」
「七尾のコロシ。」
古田が言った。
「あっ。」
片倉が声をあげた。
「この時間帯に七尾でコロシがあった。」
「その通り。」
松永は資料を丁寧に折りたたんで再び懐にしまった。
「七尾のコロシは熨子山のものの手口と同じだ。犯行が同一犯のものとすれば重要な証拠になる。」
「しかしそれだけでは村上の犯行を確定できん。」
「そうだ。念のためNシステムで村上の19日の行動も調べた。この日は村上はほとんど移動ら