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法事とは亡き人のご供養をすることです。
葬式のあと初七日から満中陰までの七回と、百日忌、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌、三十七回忌、五十回忌とあります。
すべてを勤めるとして五十回忌まで20回の法事をすることになります(二十五回忌、四十三回忌、四十七回忌を加えて23回とするところもあります)。
明治初めころまで庶民は字が読めずお経をあげることができなかったため、その都度、お寺の本堂で僧侶にお経をあげてもらっていました。追善供養したいという風習により、やがて各家に仏壇が祀られるようになって自宅で法事をするようになったのでしょう。
仏壇の前で法事を勤めることもありますが、この辺りの田舎ではほとんど仏壇から位牌を取り出します。そして床の間にあらたに座敷机などで祭壇をもうけて法事をします。
祭壇の上には正面に位牌を置き、花瓶、線香立て、花立て、ロウソク立てなどを並べます。果物やお菓子、季節の花や故人の好物だった品々もたくさん供えられます。
法事とは本来、亡くなって自らお経をあげることができなくなったご先祖さまに代わって僧侶を招き、遺族とともに、本尊にお経をあげ功徳を積むことなのです。
「追善」という言葉も、「善き功徳の追加」であって、法事同様、亡くなって功徳を積むことができなくなったご先祖に代わり、親類縁者が一堂に会して、最も功徳があるとされる読経をご本尊にお供えすることなのです。
ですから、一番大事なことは仏壇の中の本尊やまたは本尊に代わる掛け軸を、祭壇の正面の奥に安置することなのです。
当寺の法事では仏前勤行次第の冊子を渡し、一緒に経をお唱えするようにすすめますが、参加者が声をそろえてお唱えしてくれたときなどは、
「今日のご先祖さまが皆さんの後ろの末席にいて『みんなで拝んでくれてありがとう。わたしの代わりに拝んでくれてありがとう』と、お礼を言ってると思いますよ」と、私は話します。
要するに、あくまでもメインは当家のご本尊なのです。
しかしほとんどの家では位牌がメインのように中心、正面に置かれています。ご本尊は二の次のようになってしまっているのです。その上、床の間の置物がそのまま置かれていて、本尊代わりのようになっていることも多いのです。
その置物が、あるときは鷹の剥製だったり、鮭をくわえた熊だったり、あるときは徳利をもったタヌキがヘソを出して立っていたりすることもありました。
私は同じタヌキでも、楊子(ようじ)をくわえた紋次郎タヌキ(昭和47年からテレビ放映された「木枯らし紋次郎」を真似た置物)にもお経をあげたこともあります。
合掌