田舎坊主の七転八倒<お爺さんの珍接待>
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田舎坊主の七転八倒<お爺さんの珍接待> 田舎寺の檀家さんも高齢化が急速に進んでいます。 後を継いでもらいたい息子たちはきつい労働を強いられる割には収入の少ない農業を嫌い、町に出て就職、結婚し、家を建て、あらたな家庭を持って田舎に帰ってくることはなくなりました。娘さんたちも大学を出て就職し、サラリーマンと結婚し、これもあらたな生活を町で始めるようになっています。 田舎に帰ってくるのはお盆と正月、といいたいところですがそれさえも帰らない子どもたちが増えているのです。 お盆であれ正月であれ、自分の家庭が一番なのでしょう。せっかくの休みですから、家族旅行などが優先され、田舎に足を向けることはほとんどなくなってしまいました。ましてや今は田舎に帰って親の顔を見なくても、湯沸かしポットをインターネットにつないでおけば、親がそのポットを使わなければスマートホンがそのことを知らせてくれるのですから、安心して「放っておける」時代なのです。 田舎に残るのが老人ばかりになるのは当然のことかもしれませんが、それにしても寂しい時代になってきていることは、こういった現実が教えてくれています。 私は35歳の時から地域の公民館長を10年ほどつとめていました。今この公民館ではボランティアさんが中心となって、80歳以上の方の食事会を恒例で開催しています。この村の戸数は300戸あまりですが、食事会に参加する80歳以上の方は100人にものぼり、いかに高齢者が多いか驚くばかりです。 暑いお盆のことです。 平成16年までは私ひとりで約400軒の檀家さんをお参りしていました。お盆のうちでも多い日は一日に100軒お参りしなければなりません。単純計算で一軒6分お参り時間がかかるとすれば100軒で600分ですから10時間必要だということになります。これに移動時間を含めると11~12時間ということになります。この日は朝食もお昼ご飯も抜き、トイレも最大限我慢です。 8月の暑いさなかでも水分は最小限に抑え、20軒で一度お茶をいただく程度にしています。申し訳ないのですがお盆はあくまでも軒数をこなすことを優先しなければなりません。 ある棚経でのこと、おじいさんひとり住まいのおうちでお茶をいただくつもりでお参りを済ませたところで丁度よく冷たい乳酸菌飲料を出してくれたました。 コップの中の白い液体の表面には氷のような少し黒いものが浮かんでいます。白い液体に氷を浮かべれば少し陰のように黒みがかって見える、まさにその氷だと思ったのです。のども渇いているのでまず氷を「つるっ」と飲み込みました。・・・・が、どうも柔らかいのです。それはしばらくしてチュルンとのどを通り過ぎました。そのあとすぐ液体の方を飲みかけたとき「これ原液やっ!、うすめてないがな・・・」と気がつきました。 そして先ほど飲み込んだものを、よおーく思い出してみました。あの少し黒みがかった色、のどをとおった感じ・・・・・・、「あれ、ナメクジや」 たぶん、開けたままのその飲み物の瓶の口からナメクジさんが侵入していたのでしょう。 結局、原液ままの飲み物とナメクジではのどを潤すことはできませんでした。というより早くうがいをしたい気持ちになったのは言うまでもありません。 しかし、暑い中お参りしてく
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2015年8月に発行した拙書「田舎坊主の七転八倒」の読み聞かせです。 このまとめ編には優しいBGMを重ねました。 紀の川のほとりにある田舎寺の縁側で、住職の四方山話を聞いているつもりで、気楽に聴いていただければなにより幸いです。 合掌
Published 11/21/24
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Published 11/14/24