田舎坊主の七転八倒<遠隔引導>
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この田舎寺もご多分に漏れず檀家さんの数は減少傾向にあります。かつては全部で600戸近い檀家さんがありましたが、飯盛鉱山という銅鉱石を産出する銅山が1970年に閉山廃鉱になると、200戸以上がこの地を去っていったため、現在では380戸ぐらいに減少しています。 その後も多くの檀家さんが出ていかれましたが、そのうちの何軒かは今でも出檀家(でだんか)として法事やお盆のお参りなどはこの田舎寺と縁をもってつながっています。その理由は田舎から出て行っても同じ宗派のお寺が近くになかったり、やはり先祖代々お世話になったふるさとのお寺の坊さんにお参りなどはお願いしたいと思われている方も多いからでしょう。 もう一つの理由は、お墓がふるさとにあるということです。田舎を離れて行かれた方の中にはお住まいのところでお墓を求めることが困難な方も多くいるようなのです。近頃は「墓じまい」という言葉も出ているようですが、まだまだ田舎ではお墓がなければ「はかない」と、春秋の彼岸やお盆には多くの方がお参りをしてきれいにお祀りをされている姿が見られます。 このように縁をつないでいる出檀家さんは、橋本市から和歌山市までの紀ノ川筋や大阪府まであって、お盆には必ずお参りさせていただいています。 出檀家さんの法事は、ほとんどが田舎寺の本堂でつとめてもらうようにしているのですが、葬式に関してはどうしても家の近くのセレモニーホールなどへ行かなければなりません。お通夜や葬式については当然予定が立てられないため、その段取りはなかなか当家の意向に沿うことが難しいのが現実でもあります。 さてそんななか2014年2月14日、大阪の出檀家さんから葬儀の依頼が入りました。2月13日のお通夜は当家が希望している時間より一時間早めてもらいつとめることができました。しかし葬式当日は朝から思わぬ大雪となってしまったのです。 とにかく当日導師をつとめるため、辻和道副住職が自動車で出発したのですが、国道を5キロメートルほど進んだところから大渋滞で全く動けなくなり、副住職の携帯電話から「だめです。進みません」と連絡が入ります。 インターネットで調べてみると橋本市から大阪に抜ける紀見峠も全く動けません。すべての電車もバスも止まっているとのことなのです。葬儀場に電話を入れると、式場の前の道路も20センチ以上の積雪とのこと、参列者も多くの人が到着していないとのことでした。私は副住職に帰るように電話をし、式場関係者にある提案をしました。 それは本堂で引導作法をするようすをこちらからインターネットで送るので、式場のスピーカーで流すかパソコン画面に映し出してほしいというものでした。いわば遠隔で引導作法を送る遠隔引導の提案でした。 ちなみに私は年齢の割にはデジタル人間でして、パソコンがなければ仕事にならないくらいそこそこ使いこなしている方なのです。こんなときこそパソコンでネット中継だと思ったのです。しかし、式場の関係者からは、残念ながらパソコン画面はもちろんのこと、スピーカーにもつなげないとのこと、「案外不便だなあ」と感じながら、この提案は却下せざるを得ませんでした。生中継ができないとなれば、大阪の式場での予定時間に私が自坊の本堂で引導作法をし、読経や
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2015年8月に発行した拙書「田舎坊主の七転八倒」の読み聞かせです。 このまとめ編には優しいBGMを重ねました。 紀の川のほとりにある田舎寺の縁側で、住職の四方山話を聞いているつもりで、気楽に聴いていただければなにより幸いです。 合掌
Published 11/21/24
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Published 11/14/24