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きょうは、1月にすばる舎から出版した『伝わる文章がすぐ書ける接続詞のコツ』の中から「そして」について、お話ししたいと思います。
のっけから宣伝になってしまいますが、お陰様で、丸善丸の内本店、池袋のジュンク堂本店、新宿紀伊國屋本店で大きく展開していただき、好調な滑り出しです。兵庫県の未来屋姫路大津店ではポップを作ってくださったりして、並べてくださいました。ありがとうございます。
「そして」には、大きく分けて二つの意味があります。それが「継起」と「並列」です。「継起」というのは、前の話から続く内容を導く役目です。「並列」は同時に成り立つことを表します。
「家に帰って、お風呂に入り、パジャマに着替え、そしてゆっくりお酒を飲む。至福のひとときだ」という継起の例を見てみましょう。
この文は、家に帰ってからの時系列で話が進んでいて、お風呂に入って、パジャマに着替えるという流れを受けて、そこからフェーズが異なる行動が自然な流れで続きます。前の文や語句の補足や因果関係を強調するために使われることがないんです。口語では「そして、どうなった?」みたいに話を促すときにもよく使うでしょ。
「そして誰もいなくなった」は、アガサクリスティーのミステリー小説のタイトルとして有名です。劇的なイメージがありますよね。あらゆることが済んだあとに「誰もいなくなった」という感じ。これを「だから誰もいなくなった」というと、誰もいなくなった明らかな因果関係が必要になります。「そして」には、そうした因果関係を伝えるものではないので、余計ミステリアスな印象が残るんです。
これに類した接続詞は「そうして」とか「それで」というのがあります。「そうして」は「そして」の丁寧な言い回しですが、少し時間の流れを意識させます。
「やる気がでないままボーッとテレビを見ていた。そうして一日が終わった」を
「やる気がでないままボーッとテレビを見ていた。そして一日が終わった」
とすると、やや客観的なイメージがついてきます。「そうして」の「そう」にはこそあどことば」の役目が強調されるので、それまでの時間や経緯という継続した流れを受けるイメージが強くなるんです。
同じ継起の接続詞「それで」との違いも見てみましょう。民謡の「会津磐梯山」の有名な一節も「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで、それで身上つぶした」というのがあります。「それで」っていうのも、「朝寝、朝酒、朝湯」が続けば、身上(財産)をつぶすという当然の流れを表しているんです。合いの手のような軽い感じ。これを「だから身上つぶした」というと、その理由が厳しく表現されるんです。
「そして」には、前に書かれた事柄と同様の事柄を並べる「並列」の役割もあります。
「彼女は、歴史・文学そして教育分野で活躍している」は、名詞が並列している用法なので、「そして」を「中黒(・)」に置き換えることができます。
「彼女は、歴史・文学・教育分野で活躍している」という具合です。こうすると、歴史と文学と教育が等価値で並列していることがわかると思います。「教育分野」を強調したり因果関係を示したりものではありません。
ただし「彼女は、歴史・文学そして教育分野でも活躍している」というように、