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最近、議論することを避ける傾向にあるような気がするんです。議論をすると相手を傷つけてしまうという気持ちがあるんでしょうか。キレる人はいるけれど、真剣に怒る人が減ってしまったような。キレると怒るの違い、考えてみます。
どちらも同じような意味なんですが、キレるのは文字通り、ナイフなどでスパッと切るところから派生したことばなので、自分を正当化させるために見境なく相手を傷つけることになるんですね。そこには表現する言語がないので、何を考えているのかが伝わらないのです。怒るのは、相手が間違っていることを正そうとする意志が含まれています。だから、怒るは、まだ議論や会話の余地がある様な気がしています。
「怒る」と違い「キレる」の場合、議論や会話は、そこで止まってしまいます。専制政治って、ある一人権力を握って支配する政治制度です。ここには、もはや議論も会話もありません。まさに国民とキレてる状態。
民主主義って言論コストがかかるシステムなんです。多数決が民主主義ではなくて、少数意見を聞いて議論することが前提なんです。だから、時間もかかる。タイパの時代にはそぐわないと思う人が出てくるのもわからなくはありません。
リチャード・ローティーというアメリカの哲学者が、「哲学は終わりなき会話だ」という趣旨のことを言っています。哲学って真理を求めようとする学問だと認識されてきた。ことばや議論・会話もそれに付随する形で使われてきたとも言える。
そのため、真理が見つかれば、それ以上のことばや議論・会話は必要なくなってしまうことになる。でも、ギリシャ時代からずっと続いている哲学で、これだという決定的な真理は見つかっていないのも事実なんです。だから、答えのない答えを求めつづけるには、議論と会話をずっと続けていくことが必要なんです。
だから、キレてる場合じゃないんだよね。怒らないと。ちゃんと怒って、ちゃんと議論しないと道は切り開かれない、と僕は思ってるんです。
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