たったひとつの細胞の中にも、タンパク質に限っても数千種類の分子が存在し、相互作用しています。こうした細胞が、しばしば数兆以上集まって、多細胞生物の個体が構成されます。また、生命は、30億年以上の進化によって現在の姿へと発展してきたと考えられています。こうした、時空の双方にわたり極端に複雑な対象を理解するために、論理的に思考し、理論的、数理的に対象を捉えるアプローチは欠かせません。 この講義では、生命の起源、遺伝コードの確立、セントラルドグマの進化など、実験科学のみでは捉えがたい、しかし生命科学がいずれ取り組むべき魅力的な謎に対して、最新の生命科学の成果を踏まえた議論を試みます。