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「なに?突入した!?」
朝戸班からの報告を受けた岡田は大きな声を出した。
普段大きな声を出さない彼がこのような反応を見せるのは珍しい。テロ対策本部の中のスタッフが一斉に彼を見た。
古田が朝戸が泊まる宿近くのアパート部屋を何件か当たったところ、屈強な男らがそこに合流。突如としてその中の一室に踏み込んだとの報告だった。
「それってまさかトシさんが?」
「いいえ。どうもそうじゃないようです。古田さんはその場に越し抜かすように座り込んでしまってました。」
岡田は片倉を見ると彼はそれにうなずいて応えた。
「トシさんは。」
「なんかぼーっとしてます。」
「保護しろ。」
「え?」
「保護してここまで連れてこい。事情を聞く。」
「わかりました。」
「朝戸は引き続き監視するんだ。」
「了解。」
電話を切った岡田が頭を振るのを見て、片倉は口を開いた。
「自衛隊か。」
「おそらく。」
「ってことはアルミヤプラボスディアがそこに。」
岡田は二度うなずいた。
「とうとう動いたか。」
「テロを明日に控え、いつ動いてもおかしくありませんから。」
百目鬼が険しい顔をした二人の元に戻ってきた。
「いま報告が入った。トシさん自衛隊と接触したらしい。」
「お耳が早いようで。」
「なんだお前らも知っていたのか。」
「こちらもいまその連絡が入ったところです。」
「ったく…何やってんだあの人。」
「わかりません。一旦保護してこちらまで連れてくよう現場に指示を出しました。」
「ああそうしてくれ。」
「自衛隊からクレームですか。」
「いや。クレームじゃない。」
「じゃあなんて?」
百目鬼はチラリと椎名の方を見る。目が合った。
三人だけで話がしたいと言って百目鬼は片倉と岡田を連れて別室に入った。
「自衛隊から連携を打診してきた。」
「連携…ですか?」
「ああ。」
「あっちはあっち、こっちはこっちって完全縦割りで行こうって話だったんじゃなかったですか。」
「そうだ。そのため三好を連絡役として先方に張り付かせた。」
「ですよね。」
「いいか。これから話すことはほかの誰にも漏らすな。俺ら三人だけの秘密にするんだ。」
片倉と岡田は頷いて応えた。
「結論から言うぞ。突入は失敗だった。」
「え!?」
「すでにもぬけの殻。どの部屋もだ。」
片倉と岡田はお互いの顔を見合った。
「自衛隊は以前から今回のアパートを独自でマークしていた。アルミヤプラボスディアが潜伏している可能性があるとしてな。」
「そうだったんですか。」
「その対象にトシさんが手当たり次第にアクション起こしたもんだから、あいつらが動いたってわけだ。」
「んで動いてみたら中は空っぽやった…ですか。」
「そうだ。つまり自衛隊は気づけなかった。あいつらが行方をくらましていることに。」
「でも常時監視やったんでしょう。」
百目鬼は頷く。
「ほんならどうやって…。」
「アパートの一室から立坑が見つかった。」
「立坑?」
「いまそこを調べているらしいが、おそらくそこが外への脱出路だろう。」
「理事官…それ…。」
片倉がなんとも言えない嫌な顔をした。
岡田のほうは手で顔を覆う。
「聞き覚えあるだろう。これ。」
この百目鬼の問いかけに二人は頷いた。
「そうだ。三好さんが下間悠里を見失ったってい