Description
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深夜、都内の静かな高級ホテルの一室で、緊迫した会議が行われていた。
窓の外は漆黒の闇に包まれ、部屋の中の緊張が余計に際立っている。
ツヴァイスタンの代表者、エレナ・ペトロワとイワン・スミルノフは、不安と戸惑いを隠せずにいた。彼らの目的は、日本でのオフラーナと人民軍の対立を終わらせることだったが、予期せぬ展開に直面していた。
一方、日本政府側の代表、内閣情報調査室の関孝雄と陶晴宗は、冷静な表情を崩さずにいた。
特に陶は、この状況における重要な駒であることが明らかになっていた。
「彼は貴国のオフラーナの協力者です。」
こう関が静かに告げたとき、エレナとイワンの表情には驚きが浮かんだ。
彼らは日本国内で起こり得るオフラーナと人民軍との抗争を止めるための情報を求めていたが、この新たな事実によって彼らの計画は複雑なものとなった。
エレナが陶に質問を投げかけると、彼からの答えは静かながらも重いものだった。
朝倉忠敏という名前が話題に上がり、彼の影響力がツヴァイスタンにまで及んでいることが明かされた。朝倉は、日本国内でのオフラーナの活動に深く関わっており、その力は計り知れないものだった。
陶の話はさらに続いた。彼は朝倉の後継者としての地位を確立しようとしていたが、ウ・ダバを利用したテロ計画が日本の治安機関に露見し、彼はその場で全てを白状したという。
深夜に行われるこの会議は、それぞれの代表者が持つ複雑な思惑と計算によって、さらに重苦しい雰囲気を帯びていた。
夜の静寂が、部屋の中の緊張感をより一層高めていた。
「どうしてここでオフラーナの協力者を同席させたのですか」
エレナが関に問いかけると、関は鋭い眼差しで応じた。
「我々日本政府は貴国の手の内を世に出すこともできるということです。」
関の言葉は、その場にいる全員の緊張感を一層高めた。
日本におけるオフラーナの非合法活動が公になれば、国際的な非難を浴びることは避けられない。エレナの心は複雑な思考で満ちていた。さらに日本人拉致問題がこのタイミングで改めて明るみに出れば、日本の反応は予測不能だ。
今の自衛隊は、名実ともに強力な軍事力を持つ。もし奪還作戦を行うとなれば…
彼女の目は一瞬、イワンの方に移り、その後、再び関に向けられた。
「今回、ツヴァイスタン外務省から日本政府に提案があります。」
部屋には重苦しい空気が流れ、時計の秒針の音だけが、時間の経過を刻んでいた。エレナの心は、緊迫した交渉の行方と、ツヴァイスタンと日本の未来を案じていた。
深夜に行われる会議の重圧は、彼女たちの肩に重くのしかかっていた。そして、それぞれの心には、それぞれの国の運命を背負った思いがあった。
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「王志強?」
「はい。解放軍の関係者の可能性があります。」
「解放軍か…。」
神谷からの連絡を受けた片倉は思わず顔を拭った。彼の大きな手が顔をなぞる仕草には、疲労と緊張が混じり合っていた。
「これ以上はちょっとウチでは無理です。」
「わかった。ありがとう。」
隣にいた岡田に向かって片倉は頷くと、彼はそのまま別室の方へ向かっていった。
「こちらの準備は整いました。いつでも動けます