Description
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金沢市郊外の築古マンション。その一室にウ・ダバの構成員の一部が潜んでいた。
「おい起きろ。」 هيه استيقظ
肩を小突かれたアサドはやっとの思いでその目を開いた。
「もう6時だ。いつまで寝てんだ。メシを食え。」
إنها الساعة السادسة بالفعل.
كم من الوقت نمت؟
كل الطعام.
「ああ、すまない。」أه آسف.
アサドの目の前の男性は苛立っていた。
この部屋の間取りは2LDK。アサドが目を覚ましたこの部屋には、大型のアタッシュケースのようなものが多数置かれている。
「早くしろ!」أسرع - بسرعة!
慌てて身を起こしたアサドはリビングダイニングの方へ向かった。
そこには朝食の用意を命じる今ほどの男の他に4名。髭面の男達が円を描くように床に座って何かの興じているようだった。
ふとアサドはそこに目をやる。するとそこには日本円の紙幣の束が積み重なっていた。
「続いては昨日の大雨に関するニュースです。」
テレビがついていた。
石川県の地域のニュースのようだ。昨日の大雨は金沢市の一部で浸水の被害をもたらした。しかしその後雨は収まり、金沢市と野々市市に出されていた大雨洪水警報は注意報に切り替わった。一夜明けた金沢の街の様子を、この朝早くから現地リポートしている。
「しかしなんでここで雨が止むかね。」
ひとりの男がぼやくとそれに応える者があった。
「このまま雨が降り続いて作戦中止。それで仕事が流れちまえば、前金貰ってそれこそ丸儲けだったのによ。」
「まったくだ。こんなに割の良い仕事はないさ。正直、俺、ヤバい橋はもう渡りたくないんだよ。」
「そいつは俺もさ。俺だって家族があるんだ。」
「あぁお前んところのガキ、もうぼちぼち大学生だって言ってたよな。」
「ああ、あいつには来年留学して貰おうと思ってる。」
「どこに?」
「ヨーロッパの国のどこかだな。」
「そいつは賢明だ。ウチの国にいたって稼げねぇし。」
「正直、王立大学も考えたんだが、ウチみたいなコネも何もない階層じゃあ苦労するだけだ。結局搾取される側で固定される未来が目に見えるよ。」
「クソだな。」
「ああクソだ。」
「ところで日本はどうだ。」
「日本か?」
「ああ。」
「悪くない。」
「俺もそう思う。」
「だが俺らがここで生きていくのは無理だ。」
「だな。俺らがドカンとやるんだからな。」
男らの会話を耳にしながらアサドはパンを焼き、作り置きのシチューのようなものを暖める。
「それにしても運が良いな俺ら。」
「まったくだ。まさかここでドローンが手に入るとはな。」
で、と言って彼はアサドの名前を呼んだ。
「何だ。」
「昨日のお前のレク通りやれば、俺らでも本当にドローン飛ばせるんだよな。」
「ああ問題ない。」
昨日、ボストークで思わぬ武器を手に入れた。それが自爆ドローンだ。機体に爆弾が括り付けられ、それを対象に突っ込ませれば爆発する。ウ・ダバに所属して10年のベテランであるアサドはこの手のドローンの操縦についても知見を要していたため、この場に居るチームの連中にその操縦方法の手ほどき夜通し行っていた。そのため皆より遅い起床となったのである。
ー確かに運が良い。
アサドは心の中で呟いた。
本日、5班編制のウ・ダバは爆発物を積載した乗用車で金沢駅のもて