189.1 第178話【前編】
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3-178-1.mp3 「ご遺族には私から連絡する。当面デスクは三波君のことは秘して、平静を装ってくれ。」 「…。」 加賀と正対する黒田はただひたすらに床を見つめて直立していた。前髪が黒田の顔を隠すため、加賀の目では彼がどういった表情をしているかは分からない。 「デスク。」 「…わかりました。」 社長室から出た黒田は二歩ほど歩いた。しかしどうも足下がおぼつかない。壁により掛かるとへなへなと自分の身を折りたたむようにそのままそこに座り込んでしまった。 「嘘だろ…。」 声にならない声を出す。自分にも聞こえない。 彼は天を仰いだ。 熱いものが目から頬、そして顎を伝う。 バイブ音 こんな時に何の電話だというのだ。携帯を手に取った黒田はそれを床にたたきつけてやろうと思った。しかし、画面に表示される名前を見て、顔を手で拭った彼は慌ててそれに出ることにした。 「京子…大丈夫か。」 「デスク…。」 「…社長から聞いた。お前、いまどこだ。」 「警察署にいます。」 「そうか…。」 「デスク、わたし、何もできなかった…。」 この京子の言葉に黒田は何の返事もできなかった。 「とにかく行かなきゃって思って、バイクで必死になって向かったんだけど…遅かった…。」 「京子…。」 「そこに沢山の死体があった…。」 「おい…。」 「三波さんはうつ伏せだった…。」 「おいやめろ。」 「頭から血を出して…。」 「やめろー!」 黒田は絶叫していた。この声に加賀は社長室から飛び出してきた。 「落ち着け京子。しっかりしろ!」 「だって…だって…。」 京子は話せる状況にない。黒田は思い切って彼女からの電話を切った。 「それでいい。」 加賀は黒田の肩にそっと手を当てた。 「今日はもう帰るんだ、デスク。君まで壊れたら、このちゃんフリは立ちゆかなくなる。」 「…。」 明日は分からない。しかし今日一日くらいなら経験の浅い連中でも報道部を回せるだろう。最悪別部署から応援を持ってきても良い。やはり今日は帰って休め。そう加賀は黒田に言った。 「…いや、やります。」 「無理するな。」 「…安井さんも三波も居なくなって、ここで京子も離脱となるとちゃんフリは保ちません。自分が踏ん張ります。」 床から身を起こした黒田の目を加賀は黙って見つめた。 「京子のケアは警察でやってもらいます。自分はこのネタをモノにします。」 「モノにするって?」 「デスクは他部署の誰かにお願いします。自分は記者として動きます。」 加賀はあきれ顔で黒田に一瞥をくれた。 「わかった。」 加賀に一礼した黒田は早足でその場から立ち去った。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「おい。相馬の奴どこに行った。」 周辺の巡回から帰ってきた吉川は傘を畳み、身体についた雨粒を手で払いながら児玉に尋ねた。 「あぁ…少しだけひとりにしてくれってさ。」 「あん?」 吉川の片眉がつり上がった。 「世話になった人がさっき亡くなったんや。」 古田がこう言うと、吉川の表情が曇った。 「しかも事情が事情ときたもんや。」 古田は三波が死んだ経緯を吉川に説明した。 吉川「なるほど…話を聞くかぎり、その三波を殺したのは、その死んでいると思われたウ・ダバのなかのひとりか…。」 古田「ご明察。んで朝戸はいよい
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3-183-3.mp3 ドローンが機動隊車両の上空に達したかと思うと、突如として激しい閃光が放たれた。次の瞬間、爆音とともにドローンが自爆し、その衝撃が車両に直撃する。 軽めの爆発音 爆発音は雷鳴のように周囲に轟き、もてなしドームを揺るがした。その音は商業ビルのガラスを震わせ、破片が空中を舞った。 吉川「伏せろっ!」 吉川がSAT隊員に大声で言った。 大きな爆発 車両の中に積まれていた火薬が誘爆した。炎が瞬く間に車両全体を包み込み、巨大な火の玉が金沢駅前を照らし出した。爆風は猛烈で、周囲の車両や建物に衝撃波が伝わり、商業ビルの窓ガラスが次々と割れて粉々に飛び散った。爆風は人...
Published 10/25/24
3-183-2.mp3 特殊作戦群「こちら特殊作戦群、これよりアルミヤプラボスディア掃討のため現場に介入する。SATは援護を頼む。」 無線の一報が入った瞬間、戦場のすべての勢力が息を呑んだように思えた。 自衛隊の特殊作戦群が戦闘に介入する。 それは、当該部隊が創設され初めてのことである。しかも現場は日本。 すべての当事者が、その異様な光景に困惑し、動きを止めた。 片倉「特殊作戦群やと…。」 公安特課テロ対策本部の片倉がこれ以上の言葉が出ないようだった。 相馬「特殊作戦群…。」 駅交番で児玉と共に待機する相馬も、この部隊名称を呼ぶのが精一杯だった。 森本「特殊作戦群だと…。」...
Published 10/25/24