189.2 第178話【後編】
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3-178-2.mp3 金沢駅の改札口前に大きなホワイトボードが設置された。 そこには「この先大雨の予報のため、本日の運行を中止します」と達筆で書かれている。 確かにまとまった雨が降り出した。しかし昨日の大雨と比べてたいしたことは無い。携帯の天気予報アプリで雨雲レーダーを見ても、そこまでの降雨量は予想されていない。なのに運行中止の案内だ。 駅側の説明によると、昨日の大雨によって緩んだ地盤が、今日のこの雨によって崩壊した箇所が数カ所発生したようだ。それにより架線が破壊され運行ができない状況になっている。復旧のめどは立っていない。したがって本日の運行は中止とするらしい。 理由が理由だ。ということで金沢駅から代替手段であるバス、タクシーといった交通手段に切り替える人たちが潮が引くように改札口前のコンコースから人が捌けだした。 「なかなか手慣れた情報操作だな。見ろ。混乱とは無縁だ。」 挺熟练的信息操作啊。看吧,没有一点混乱。 「いやいや、これぞ日本人の民度だ。我が国では考えられん。秩序立った行動だ。日本という場所と日本人という生き物だけできる芸当さ。」 不不不,这就是日本人的素质。咱们国家是想象不到的。这是只有日本这个地方和日本这种人才能做到的奇迹。 「よし。ひとつかましてみよう。」 好。咱们搞一搞。 「いいだろう。」 行。 コンコースからバス停に移動する彼らのひとりが電話をかけた。 「やれ。」动手吧。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ちょっとあんた!どうしてくれるのよ!」喂!你到底怎么办! ツアーガイドらしき女性がツアー客を先導するための旗を肩に掲げて、鬼のような形相で職員をがなり立てていた。 聞けば彼女らの団体は本日、金沢観光の後、隣県である福井県へ移動。そこで在日中国人との親睦を図る式典に参加する予定だったそうだ。この式典には党幹部も複数人出席する予定であり、遅刻は許されない。現在時刻は16時半。式典は18時からであり、今から代替の観光バスを手配するのも難しいようで、何か変わりの方法を支給手当てせよとのことである。 それは鉄道を運行する我々がやることではない。私たちは乗客の安全を第一に考えた結果、運行中止の判断をとった。そもそもそういったリスク管理をすることが、旅行会社の仕事であろう。駅側はそう突っぱねた。 「なんだ!お前達日本人はここでもわたしたちを差別するのか!」什么!你们日本人就是在这里歧视我们! ガイドは中国語で職員を罵った。 すると後ろに控えていた、20名程度のツアー客が一斉に怒号を上げた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 交番内で電話を取っていた警部補が、それを切るなり困惑顔で相馬らを見た。 「コンコースで中国人観光客が暴れています。突然の運行中止とはどういうことだ。すぐに代替手段を用意せよと。」 その場の全員が一斉にため息をついた。 「駅には中国語を話せる人間がいるそうですが、如何せん相手があまりにも感情的になっていて、抑えが効かないようです。」 その場の全員が相馬を見た。 古田「相馬。お前さん、中国語は?」 相馬「いや無理です。」 二人のやりとりを横目に児玉は立ち上がった。 児玉「相馬。機動隊員を10名
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3-183-3.mp3 ドローンが機動隊車両の上空に達したかと思うと、突如として激しい閃光が放たれた。次の瞬間、爆音とともにドローンが自爆し、その衝撃が車両に直撃する。 軽めの爆発音 爆発音は雷鳴のように周囲に轟き、もてなしドームを揺るがした。その音は商業ビルのガラスを震わせ、破片が空中を舞った。 吉川「伏せろっ!」 吉川がSAT隊員に大声で言った。 大きな爆発 車両の中に積まれていた火薬が誘爆した。炎が瞬く間に車両全体を包み込み、巨大な火の玉が金沢駅前を照らし出した。爆風は猛烈で、周囲の車両や建物に衝撃波が伝わり、商業ビルの窓ガラスが次々と割れて粉々に飛び散った。爆風は人...
Published 10/25/24
3-183-2.mp3 特殊作戦群「こちら特殊作戦群、これよりアルミヤプラボスディア掃討のため現場に介入する。SATは援護を頼む。」 無線の一報が入った瞬間、戦場のすべての勢力が息を呑んだように思えた。 自衛隊の特殊作戦群が戦闘に介入する。 それは、当該部隊が創設され初めてのことである。しかも現場は日本。 すべての当事者が、その異様な光景に困惑し、動きを止めた。 片倉「特殊作戦群やと…。」 公安特課テロ対策本部の片倉がこれ以上の言葉が出ないようだった。 相馬「特殊作戦群…。」 駅交番で児玉と共に待機する相馬も、この部隊名称を呼ぶのが精一杯だった。 森本「特殊作戦群だと…。」...
Published 10/25/24