191 第180話
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3-180.mp3 17時半 「おい!椎名!マサさん!返事しろ!」 片倉が無線機から何度も椎名と富樫の名前を呼ぶ声が聞こえていた。 「Слава Отечеству。」 「では始めよう。」 椎名は車両の中のキャビネットをまさぐり、武器を手に取り始めた。 「あぁすいません。無線の調子が急におかしくなってしまって。」 「なんや、ジャミングか。」 「わかりません。急に音が聞こえなくなってしまって。」 「椎名は。」 「出ました。」 「なに?」 「いま車から出ました。」 「な、もう!?」 森本の前に座る椎名はにやりと彼に微笑み返した。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 交番の中で待機していた古田はおもむろに立ち上がった。 「どうしたんですか。」 相馬が声をかける。 「ちょっくらビルの方にいってくる。」 この場にいる古田、相馬、児玉、吉川はいま商業ビルで何が起きているのかを無線を通じて把握している。 相馬「今から行ってどうするんですか。」 古田「あそこには久美子がおる。」 相馬「久美子…。」 相馬の表情が曇った。 古田「ワシの最重要任務は久美子の観察と保護や。いまワシがここに居ることは主任務じゃあない。」 相馬は何も言えなかった。 「なんだ。久美子ってのは。」 吉川が尋ねた。 しかしこれを説明するには時間がかかる。 相馬「公安特課重要監視対象です。鍋島能力の真相解明の鍵を握るとされる人物です。」 古田は6年前の鍋島事件から、この久美子の監視要員として警察との雇用契約を結んでいる。そう相馬はざっくりと説明した。 吉川「ならばやむを得んな。」 吉川はどこか残念そうな顔である。 古田「久美子の保護が確認されれば、すぐに戻る。もしも情報があればすぐに寄こしてくれ。」 こう言って古田は交番を飛び出して駆け足でビルに向かった。 「どうした吉川。」 古田が駆けていく様子を窓から見つめる吉川に児玉が声をかけた。 「なんだろう…。猛烈に嫌な予感がする…。」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「はい。みなさん!押さないで!落ち着いて!」 商業ビルの一階正面入り口に来ると、警察官が避難誘導をしていた。 今日は5月1日金曜日。明日は土曜。明後日は憲法記念日。翌日はみどりの日。そして5日はこどもの日だ。いわゆるゴールデンウィークの後半戦が明日から始まる。4月29日の昭和の日から有給休暇を巧みに利用して、すでにゴールデンウィークに入っている人も少なくない。アパレルと飲食、映画館間が入る商業ビルのウィークデーの客の入りはさほどでもないが、この日の17時半現在のここは、観光客を含めてかなりの客数であった。 「おい。」 古田は警察手帳を警察官に見せた。 古田の階級は警部である。県警本部では課長補佐、警察署では課長クラスであるため、この手の現場警察官より大体が上位の階級となる。 「どうや。誘導の状況は。」 発砲があり、一部の人間が上階に戻ってしまった。そのほかは順調にビルから捌けられている。そう彼は答えた。 「一部の人間って。」 「外国人です。日本語が分からないんです。そこにこのパニックです。通訳もいませんので手を焼いています。」 古田は彼の労をねぎらう言葉をかけ、そのまま上階目指して歩き出し
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3-183-3.mp3 ドローンが機動隊車両の上空に達したかと思うと、突如として激しい閃光が放たれた。次の瞬間、爆音とともにドローンが自爆し、その衝撃が車両に直撃する。 軽めの爆発音 爆発音は雷鳴のように周囲に轟き、もてなしドームを揺るがした。その音は商業ビルのガラスを震わせ、破片が空中を舞った。 吉川「伏せろっ!」 吉川がSAT隊員に大声で言った。 大きな爆発 車両の中に積まれていた火薬が誘爆した。炎が瞬く間に車両全体を包み込み、巨大な火の玉が金沢駅前を照らし出した。爆風は猛烈で、周囲の車両や建物に衝撃波が伝わり、商業ビルの窓ガラスが次々と割れて粉々に飛び散った。爆風は人...
Published 10/25/24
3-183-2.mp3 特殊作戦群「こちら特殊作戦群、これよりアルミヤプラボスディア掃討のため現場に介入する。SATは援護を頼む。」 無線の一報が入った瞬間、戦場のすべての勢力が息を呑んだように思えた。 自衛隊の特殊作戦群が戦闘に介入する。 それは、当該部隊が創設され初めてのことである。しかも現場は日本。 すべての当事者が、その異様な光景に困惑し、動きを止めた。 片倉「特殊作戦群やと…。」 公安特課テロ対策本部の片倉がこれ以上の言葉が出ないようだった。 相馬「特殊作戦群…。」 駅交番で児玉と共に待機する相馬も、この部隊名称を呼ぶのが精一杯だった。 森本「特殊作戦群だと…。」...
Published 10/25/24