Episodes
Published 05/01/19
Published 05/01/19
126.2.mp3 「12月24日お昼のニュースです。政府は24日午前、2015年度第3次補正予算案を閣議決定しました。今回の補正予算は今年10月に国家安全保障会議において取りまとめられた「日本国の拉致被害者奪還および関連する防衛措置拡充に向けて緊急に実施すべき対策」に基づいた措置を講じるためものです。 この予算案では先ごろ国内で発生したツヴァイスタンの工作員によるテロ未遂事件を受けてのテロ対策予算の拡充として500億円。ツヴァイスタンに拉致された疑いがある特定失踪者の調査費として28億円。近年日本海側で脅威となっている外国船の違法操業対策および外国公船の領海侵入対策として海上保安庁の予算を新たに1,000億円追加します。あわせてツヴァイスタン等によるミサイルの脅威に対抗するため、新たに5兆円の防衛予算を措置します。防衛予算においては国際標準である対GDP比2%の達成を継続的に維持するため、来年度の本予算においては今回の補正予算の5兆円を既に盛り込んだ10兆円とする予定です。これで今回の補正予算における予算額は合計で5.1兆円となります。これはリーマンショック以降の補正予算とし...
Published 12/31/16
Published 12/31/16
126.1.mp3 コミュの会場となった会館前には複数台のパトカーが赤色灯を灯して駐車していた。会館には規制線が敷かれ関係者以外の立ち入りは厳禁となっている。週末金沢駅の近くということもあって、このあたりで仕事帰りに一杯といった者たちが野次馬となって詰め寄せていた。規制線の中にある公園ベンチには、背中を赤い血のようなもので染め、遠くを見つめる下間麗が座っていた。 「ついては岡田くん。君にはこの村井の検挙をお願いしたい。」 「罪状は。」 「現行犯であればなんでもいい。」 つばを飲み込んで岡田は頷いた。 「よし。じゃあ君の協力者を紹介しよう。」 「え?協力者?」 奥の扉が開かれてひとりの女性が現れた。 「岩崎香織くんだ。」 岩崎は岡田に向かって軽く頭を下げた。 「岩崎…?」 ーあれ…この女、どこかで見たような…。 「近頃じゃネット界隈でちょっとした有名人だよ。」 「あ…。ひょっとしてコミュとかっていうサークルの。」 「正解。それを知っているなら話は早い。そのコミュってのが今日の19時にある。そこにはさっきの村井も共同代表という形でいる。」 「村井がですか?」 「ああ。」 「君に...
Published 12/31/16
Published 12/31/16
125.2.mp3 7時間前 12:00 「1512室ですか?」 「はい。」 「失礼ですがお名前をお願いします。」 「岡田と言います。」 「岡田様ですね。失礼ですがお名前もいただけますか。」 「圭司です。」 「岡田圭司様ですね。しばらくお待ちください。」 ホテルゴールドリーフのフロントの女性は受話器を取って電話をかけはじめた。 「フロントです。ロビーにお客様がお見えになっています。はい。ええ男性です。岡田さんとおっしゃるそうです。ええ。はい。かしこまりました。それではお部屋までご案内致します。」 女性は電話を切った。 「私がご案内いたしますので、一緒に来ていただけますか。」 「え?どこか教えてくれれば自分で行きますけど。」 「当ホテルのスイートルームになりますので、私がご案内いたします。」 「スイート?」 エレベータを5階で降りそのまま廊下をまっすぐ奥に進むと、いままであった部屋のものとは明らかに作りが違うドアが現れた。重厚な作りの観音扉である。女性はインターホンを押した。暫くしてその扉は開かれた。 「おう。」 「え?」 扉を開いたのは数時間前まで捜査本部に岡田と一緒にいた、県...
Published 12/31/16
125.1.mp3 金沢駅近くの会館。この一階の大ホールに大勢の人間が集まっていた。コミュの定例会である。参加者は先日のものより数段多い。これも岩崎香織が電波に乗った効果なのだろうか。 「みなさん。こんばんわ!」 司会者が参加者に向かって大きな声で挨拶をするとそれに参加者は同じく挨拶で応えた。 「いやー今日は随分と参加者が多いですね。特に男性の方がいつもより多い気がします。」 彼がそう言うと参加者はお互いの顔を見合った。 「やっぱりなんだかんだと言ってテレビの影響力ってすごいんですね。試しに聞いてみましょうか。今日始めてここに来たっていう人手を上げてみて下さい。」 半数が手を上げた。 「なるほどー。じゃあ今手を上げた人たちにもうひとつ聞いてみましょうか。岩崎香織を見てみたいって人は手を上げてみて下さい。」 全員である。 「いやー岩崎人気はすごいですね。」 ステージの裾の方にいた村井は腕時計見目を落とした。そして側にいたスタッフに声をかける。 「インチョウは。」 「駄目です。携帯の電源が切られてます。困りましたね。」 「…何なんだよ。こんな大事な時に。」 「連絡が取れんがですから...
Published 12/31/16
124.2.mp3 「若林くん。朝倉部長に聴かせてあげろ。」 「はい。」 携帯電話を取り出した若林もまた、応接机の上にそれを置いた。 「工夫しろ若林。」 「あまり事を荒立てるなといっただろう。」 「ですが、あまりに突然のことでしたので。」 「その後の工夫が足りんと言ってるんだ。」 「はっ。もうわけございません。」 「しかしお前は籠絡だけは上手い。」 「ありがとうございます。」 「だが程々にしておけよ。あまり深入りすると足がつく。」 「何せ公安の奥方ですからね。」43 音声を聞いた片倉の表情が変わった。 「公安の…奥方…?」 「なんだ若林。」 「今もまだベッドでぐっすり寝ていますよ。そろそろ帰らないといけないんですが。」 「くくく…。」 「いやぁ40しざかりって本当なんですね。」 「そうか…。そんなにか。」 「ええ。ちょっとこっちが引くくらいでした。」 「はははは。この下衆男め。」 いつになく朝倉の表情が豊かである。 「部長。これは仕事です。」 「ああわかっている。からかってすまなかった。」 「こっちも必死なんですよ。何とかして奮い立たせないといけませんから。」 「ふふふ....
Published 12/30/16
124.1.mp3 ドアをノックする音 「来たか。」 朝倉はドアに向かって部屋に入るよう言った。 長身の男がドアを開け、ゆっくりとした動作で部屋に入ってきた。 「え…。」 片倉の存在に気がついた男は思わず立ち止まった。 「なんでお前がここに…。」 「これは…どういうことなんや…。」 「部長。これはどういうことですか。」 男は不審な顔で朝倉を見るが彼は意に介さない。 「片倉。この男に見覚えがあるだろう。」 「…え…。」 「紹介しよう。直江首席調査官だ。」 朝倉は直江に片倉に挨拶をするよう促した。 「…直江真之です。いつぞやはお世話になりました。」 「直江…やっぱりあん時の…。」 「朝倉部長。これはいったいどういうことですか。」 直江の顔には朝倉に対する不信があからさまに出ていた。 「貴様の代わりだよ。」 「え?」 「モグラは退治しないとな。」 「モグラ?」 朝倉のこの発言に片倉は絶句した。 「え…。」 「調査対象であるコミュに調査員を派遣させるも、奴らは常にそれを察知していた。」 「なんやって…。」 「公調の動きがどうも奴らに筒抜けになっている。そう考えた俺は警察を装って内密に金...
Published 12/30/16
Published 12/30/16
123.mp3 霞が関合同庁舎の前に立った片倉は、登庁する職員に紛れていた。皆、言葉も何もかわさずただ黙々と歩き続ける。立ち止まった彼はおもむろに携帯電話を取り出して電話をかけた。 呼び出し音 「片倉です。おはようございます。」 「おはよう。いまどこだ。」 「公庁の前です。」 「なに?予定は15時だぞ。」 「なにぶん不慣れな東京です。昨日の夜金沢出て車で休み休み来ました。」 「車?」 「はい。これがあと半年先ですと北陸新幹線で2時間半とちょっとでここに来ることができたんかもしれませんが。」 「北陸新幹線な…。」 「まぁ部長との予定の時間まで随分ありますから、それまでどっかのネットカフェで休憩でもとります。」 「待て。せっかく来たんだ。俺の部屋まで来い。」 「え?」 「こっちも遠路はるばるお前が来るから、何かおもてなしをしないとと思って、その準備をしようとしていたところだ。」 「そんな…気を遣わんでも…。」 「こんな時間にまさか貴様が来るとは思わなかったから、何の準備もできていないが、空調が効いた部屋にいるほうがお前も疲れがとれるだろう。」 「あ…いいんですか?こんな田舎のいちサ...
Published 12/30/16
Published 12/29/16
122.mp3 「下間確保しました。」 「了解。」 「これからマサさんと下間の通信手段を抑えます。」 「わかった。くれぐれもホンボシに感づかれないように注意しろ。」 「了解。」 土岐は無線を切った。 「いい流れだね。」 「はい。」 県警本部長室の中には各種無線機が並べられ、数名の捜査員が詰めている。その中で本部長の最上と警部部長の土岐は向かい合うようにソファに掛けていた。 「七里君は?」 「安全なところに匿っています。」 「江国は?」 「情報調査本部の取調室です。今川逮捕と橘刑事告発の話を聞いてシステム改竄についてすぐにゲロしました。」 「ほう。」 「今川から県警システムの受注話を聞いたときから、鍋島の指紋情報を都合よく改竄できるよう細工を施していたようです。」 「そうか。」 「HAJAB成長の鍵を握っていた今川を抑えられ、金沢銀行システムの斡旋窓口だった橘がやられたとなると、流石に江国もどうにもならずに早々に敗北を認めたというところですか。」 「そういうところだろうな。」 「それにしても一色貴紀という男をとりまく人物のその…絆とでも言うんでしょうか…。どうしてここまで人を動か...
Published 12/29/16
Published 12/29/16
121.mp3 「ご苦労さん。トシさん。今どこや。」 「病院や。」 「傷は。」 「幸い大した事ない。」 「…良かった。いきなりガサッっていってトシさんうめき声出すんやからな。」 「ふっ。ワシも長いサツカン人生で撃たれたのは初めてやわいや。こんでしばらく手は上がらん。」 「痛いんか。」 「あたりめぇや。だらほど痛いわ。」 「ほんだけ元気があるんやったら、すぐにでも復帰できそうやな。」 片倉は煙草を咥えた。 「トシさんを撃って、すぐさま鍋島の頭を撃ち抜く。悠里のやつここまでの腕を持っとったとはね。」 「あぁ得物はVSSらしい。」 「VSS?」 「あぁワシはその手の重火器についてはよく分からんが、SATの詳しい奴が言うにはロシア製のもんらしい。なんでも開発時に要求されたんは「400メートル以内から防弾チョッキを貫通する完全消音狙撃銃」。(出典https://ja.wikipedia.org/wiki/VSS_(狙撃銃))悠里が狙撃をしたんは丁度400メートル離れたマンションの屋上。そこから射程ギリギリの標的を見事狙撃するわけやから、あいつの腕は恐ろしいもんやと。」 「ほうか…。」 「...
Published 12/29/16
Published 12/28/16
120.mp3 「こいつとお前を殺す。」 銃口を向けられた古田は微動だにしない。 「…心配するな一瞬だ。」 「ふっ…。」 「なんだ。」 「最後の最後でチャカか。あ?鍋島。」 「なんだてめぇ。」 「お前は散々人を殺めた。その手口は全て絞殺もしくは刺殺。チャカは使わん。そんなお前がここにきてチャカを手にした。」 「だから何なんだ。」 「相当切羽詰まっとれんな。」 「うるさい。」 古田は右拳を鍋島に向けて突き出した。 「あん?」 「鍋島。これに見覚えがあるやろ。」 そう言うと古田は握りしめていた右手を開いた。 それを見た鍋島の動きが一瞬止まった。 「村上が使っとったジッポーや。」 「それがどうした…。」 「お前が目指した残留孤児の経済的自立。それを支援しとった村上のな。」 「言うな。」 「お前が金金言うとる横で、村上は仕事を斡旋したり本当の意味でのあいつらの自立支援に取り組んどった。自分の金を持ち出してな。」 「…。」 「熨子山の塩島然り、相馬然り。村上の世話になった人間は数しれん。」 「相馬…だと…。」 「それがどうや。お前はそんな村上を殺した。それがもとで相馬は会社を厄介払いされ...
Published 12/28/16
Published 11/27/16
119.2.mp3 「えっ?何やいまの声…。」 職員室の応接ソファーに座っていた相馬が声を上げた。 「追い詰めとるんや。」 「え?」 相馬達の輪の中にひとりの中年男性が居た。ぱっと見は社会科の先生のようである。 「佐竹と古田。この2人が鍋島の頭ン中を引っ掻き回しとる。」 「頭ン中を引っ掻き回す?」 「ああ。鍋島は普通じゃねぇ。普通じゃねぇ奴を相手にすっときはこっちも普通じゃねぇ感じでいかんとな。」 「でも…。」 相馬はあたりを見回した。物々しい無線機材が並び、スタッフが何かの指示を出している。 「あん?これか?」 「ええ。これだけ警察の人らがおればどんな人間でも手も足もでんでしょ。」 「まぁな。」 「でもなんで刑事さんらがここで待機しとるんですか。」 「さっさと鍋島確保しろってか。」 「え…あの…。」 「そりゃいつでもできる。けど佐竹も古田もオトシマエつけんといかんって言っとるんや。ここまで来るにはあいつらの力もでかかったからな。それくらいはあいつらの好きなようにさせんとな。」 「そのオトシマエって何なんですか?」 「知らん。お前さんこそ知らんがかいや。」 「あ…ええ…。」 「...
Published 11/27/16