75,12月21日 月曜日 18時23分 県警本部
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75.mp3 すれ違う者皆がこちらを見る。一体何事かといった表情で見るものもあれば、律儀に敬礼をして道を譲る者もいる。彼はエレベーターの降りるボタンを忙しなく押してそれが来るのを待った。しかし5秒後には踵を返して階段へと足を進めていた。彼は階段を降りるというより落ちるように凄まじい勢いでそれを駆け降りた。そこに携帯電話の音がなった。彼はそのまま階段を降りながらそれに出た。 「おうトシさん。」 「お前どこや。」 「階段。」 「はぁ?お前ふざけんなや。」 「って言うかトシさんやべぇわ。」 「どいや。」 「村上や。」 「はぁ。」 階段を降り切ったところで片倉は携帯電話を耳にあてている古田と出くわした。古田は手にしていたものを懐にしまった。 「とにかくやべぇ。トシさん。やべぇことになった。」 「何が?」 「これ見てくれま。」 片倉は一枚の写真を古田に手渡した。 「なんやこの車は。」 「村上の車や。」 「村上の?」 「ほうや。ほんで…。」 片倉は自分の携帯電話を操作して、その中にある一枚の写真を古田に見せた。 「あ。」 「一緒やろ。」 「ナンバーも同じやがいや。」 「ほんでこれや。」 そう言って片倉はもう一枚の写真を表示させた。 「誰やこれは?」 「アサフスから出てきたんや。トシさんこの女のこと知っとるか。」 「いや…。アサフスって、ワシら昼にもあそこに行っとったがいや。そん時にはこんな女おらんかったけどなぁ。」 「この女が誰かってのは気になるところやけど、それ以上にひっかかかることがあるんや。」 「何や。」 「村上の車がこの女を乗せて走り去って行った。」 「何?」 「この女、アサフスを出てバス停でバスを待っとった。そこにこの車が横付けした。」 「女と村上、知り合いねんろいや。」 「それがな、どうももともと知っとる風じゃねぇげんて。」 「と言うと?」 「知り合いが迎えに来たとかやったら「ありがとー」みたいに親しげな感じだすやろ。」 「おう。」 「ところがなんか女は困った感じのリアクションをしとってな、遠くから見とったから正確かどうかわからんけど、車に向かって頭下げたりして何か拒んどる感じやったんや。」 「喧嘩でもしたか?」 「いや。ただ突き放す感じで拒否るっつうんじゃなくて、なんか気ぃ遣うみたいに。」 「ほう。」 「でも押し切られたんか、女は結局載せられて車は北の方角に走っていった。」 古田の表情が険しくなった。 「まさか…拉致…。」 「おう…気の揉みすぎならいいんやけど。」 「ほうか、ほんで車が気になってここに来て調べてみると、検問に引っかかった村上の車とおんなじ車やったってことやってんな。」 片倉は頷いた。 「なんか俺嫌な予感がすれんて。」 ここで無線から音が聞こえた。 「岡田や。」 「どうした。」 「佐竹が動きました。今あいつをつけています。」 「わかった。ちなみに佐竹の様子に変わったところはねぇか。」 「なんかよく分かりませんが、ちょっと落ち着きがない感じです。」 「落ち着きがない?」 「ええ。」 「本多が自殺したからか?」 「わかりません。随分と乱暴な運転ですよ。」 「どこに向かっている。」 「わかりません。しかし金沢銀行本店方
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81.2.mp3 現場に一人残された村上は震える手で井上の顔面めがけてハンマーを振り下ろした。何度も。彼の身につけている白いシャツにおびただしい量の血液が付着した。 その後、塩島の携帯で警察に通報した村上はひとまず山頂を目指した。山頂から麓まで一気に駆け下りることができる場所ががあることを村上は高校時代の鬼ごっこで知っていた。しかしその山頂には間宮と桐本がいた。自分の姿を目撃され万事休すと思った時だ。気がつくと目の前に二人が倒れていた。おそらく自分がやったのだろう。無我夢中だったためなのか全く記憶にない。村上はこれも一色の犯行とするため、2人の顔面を破壊したのだった。 鍋島と村上は2...
Published 08/26/20
80.2.1.mp3 静寂の中、銃声が鳴り響いた。 目の前が真っ暗になった。 撃たれた。 俺は村上に撃たれた。 撃たれた? 痛くない。 そうか脳をやられたか。 いや、ならばこんなに頭が働かないはずだ。 眩しい。 なんだこの光は。 そうか俺は死ぬのか。 寒い。 風が寒い。 地面も冷たい。 地面? なんで地面が冷たいってわかったんだ。 手が動く。 痛くない。 まさか。 佐竹は目を開いた。 彼は無意識のうちに目を瞑って地面に倒れこんでいたようだ。彼は即座に身を起こした。すると村上の姿が目に飛び込んできた。彼はその場にうずくまって自分の右腕を抑えていた。...
Published 08/19/20