“小生がニューヨークを離れもう何年だろうか。 車窓を流れる景色を眺めながら思い耽る。 東京で一旗上げてやると、ギラギラしていた新人時代。 生意気だと陰口を叩かれながら、類を見ない大型プロジェクトを受注。 若くしてニューヨークでの新規開拓を命じられた。〈寝る暇なんてなかった。よくやり合ったNickは元気だろうか?〉ブルックリンの古い事務所はいつしかマンハッタンに移り、若い世代に席を譲った。後は余生と日本に帰国したものの、今は孫ほどの若い世代の育成を託されている。 刺激的な毎日だが、今は仕事が全てじゃない。 〈歌舞伎鑑賞が趣味とは。 変わっていくな、時代も。人も。景色も。〉 ふと車内に視線を戻すと鏡越しに運転手と目が合った。 「考えごとですか?」 少し気恥ずかしくなり着物の衿元を正す。 「いや。少し音量を上げてくれないか?」 「承知しました。」 運転手が音量を上げると、楽しそうな笑い声が少しずつ大きくなる。 〈あの頃の小生とNickのようだ。〉 自然と口角が上がり、ふっと息が漏れた。 これが、5点ラジオとの出会いであった。”
オレとNick via Apple Podcasts ·
Japan ·
06/28/23