連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』
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「これからは、この博多で、自分の人生を歩いて行こうと思うんだ」「そう。よかったやんね!」「これからは、俺も、博多弁を使わなくっちゃな」かなめは、つないだ手を離し、展望デッキの端まで歩いた。目の前には、福博の街が広がっている。様々な思いが交錯する。これから福博の街は、どんな発展を遂げるのだろうか……。そして、かなめと博の未来は?博に、最初に使ってほしい博多弁……。やっぱり、あの言葉だ。振り返ったかなめは、一つ深呼吸をして、思いを込めて告げた。
Published 12/17/21
「……報告することがあるんだ」博の言葉を、かなめは心地よく、心の中にこだまさせた。「このプロジェクトをきっかけに、福岡や九州とのつながりが強くなったから、事務所としても、この九州地区でのプロジェクトを、重点的に扱うことになったんだ。それで……」博が、つないだ手に力を込めた。その手が、少し汗ばんでいるのがわかる。「博多支所を作ることになったんだ」どうやら、会長さんが「博から報告させる」と言ったことは、これのようだ。「それじゃあ、これからもずっと、博多に?」博が頷いた。雲間から光が差し込み、博はまぶしそうに目を細めた。その瞳は、中学生の頃の、かなめの憧れだった博の姿を確かにとどめていた。「こ...
Published 12/17/21
「それじゃあ、もしかしてマイヅル様って、この福博の街ばつくった、福岡藩の……?」「駅長に矢を放った時、マイヅル様は、水牛みたいな巨大な角の兜をかぶった鎧姿だったろう? あれこそまさに、戦国の世を戦い抜いた福岡藩の初代藩主、長政公の鎧兜姿なんだ」「初代藩主の黒田長政公か……。」「きっとマイヅル様は、長政公だったころからずっと、福博の融和と発展を裏で支え、見守る人だったんだろうな」マイヅル様も、今は心穏やかに、この福博の街を見守っているのだろうか。「福岡と博多の街の間を流れる那珂川に二つしか橋を架けないで、枡形門をつくったのも、街を分断するためじゃない。博多の昔ながらの文化を守るためだったん...
Published 12/17/21